ファンダメンタルズ研究所

為替や株価の動向について主にファンダメンタルズの観点から書き記します。

最近のソロスチャート

ここ1年ほどの間にMBは大きく変化しているので、以前のデータにここ1年のデータを加えたソロスチャートを作ってみました。

まずはドル/円。

縦軸のスケールは恣意的に調整してあります。(以前のグラフとは上下が逆です)

 

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日本でも量的緩和を始めたので、MB比(日/米)は上がってきています。

(MB比は日本のMBは億円、米国のMBは百万ドル単位のデータを使ってます。)

現段階では米国もまだMBを増加させていますが、日本の増加分の方が割合で考えるとペースが速いということですね。

具体的には、昨年5月の段階で米国のMBが2.60兆ドル、日本のMBが116兆円なのに対し、今年5月の段階では米国のMBが3.15兆ドル、日本のMBが157兆円となっています。

ただ、日本円に対する米ドルの上昇は、MB比の変化よりもはるかに大きいです。

これは、数年後までのMB比の変化を織り込んでいると考えられます。

もし日銀が宣言通りに2014年末までに100兆円程度MBを増やすとすると、日本のMBは220兆円ほどになり、米国が量的緩和縮小を行い、ほぼ同程度のMBで推移したと仮定すると、MB比は2014年末の段階で0.7程度まで上昇します。

 

 

次にユーロ/ドル。

 

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ここ1年で急激にMB比が変化しています。

これは、米国のMBの伸びよりも、ユーロ圏のMBの減少によるものです。

具体的には、昨年5月の段階で米国のMBが2.60兆ドル、ユーロ圏のMBが1.75兆ユーロなのに対し、今年5月の段階では米国のMBが3.15兆ドル、ユーロ圏のMBが1.33兆ユーロとなっています。

2011年末と2012年初頭に実施された大規模なLTRO(長期資金供給オペ)の一部が返済期日を迎え、MBが縮小したためです。

MB比が上昇しているにも拘わらず、ユーロが伸び悩んでいる理由として、米国に対して経済の回復が遅れていることや、今後再びLTROが実施される可能性の考慮などがあると思います。

 

ユーロ圏で追加LTROの可能性

 

ECBのフォワードガイダンスは12カ月超、あらゆる措置備える=アスムセン理事 | ビジネスニュース | Reuters

 

アスムセンECB専務理事がLTROの可能性について言及したようです。

LTROは長期資金供給オペの略で、ECBが証券等を担保とし、民間銀行へ資金を貸与します。

これによってMBが増え、流動性が高くなるわけです。

 

この発言は、数日前のIMFの指摘を受けたものだと考えられます。

ECB、直接資産買い入れと追加LTRO実施すべき=IMF | ビジネスニュース | Reuters

 

ECBはここ数年では、2011年12月と2012年2月に大規模なLTROを実施しており、為替に大きな影響を与えています。

流動性が高まることはユーロ圏の経済に好影響を与えますが、短期的にはユーロ安になる公算が高いです。

ここ数週間でユーロはかなり売られていますが、LTROが実施されることになればさらに1.2近辺まで下落する可能性があります。

 

追加LTROについてまだ具体的な実施計画は出ていないようですし、上記の記事でも「足元われわれはちょうど適正な速度で運転しており、ブレーキやアクセルを踏むつもりはない。これは現時点で見られる統計に基づく考えだ。」という発言があり、すぐに実施されることはなさそうです。

ただし今後もユーロ加盟国の財政危機や経済指標の低迷などが続けば現実味を帯びてくるでしょう。

ユーロ圏の動向には注意が必要ですね。

各国の政策金利の推移

米国の雇用統計が改善していますが、それによって緩和縮小観測とともに、来年中の利上げの予測が出てきています。

日本や欧州では、政策金利の上昇はまだまだ先の話でしょう。

米国だけ金利が上昇し、日本や欧州との金利が広がれば、為替レートにも大きな影響が出るものと考えられます。

 

金利差が生じた場合に、為替にどの程度影響するか、過去のデータから考えてみましょう。

ここ30-40年の各国の政策金利の変化をまとめたサイトがあると便利なのですが、なかなかないですね…

ここ5年ほどであれば、例えば以下のサイトにデータがあるのですが。

政策金利一覧|FX 外為どっとコム

1988-2006年(ただし途中が抜けてる) ならここに。

世界各国の公定歩合(政策金利)

 

過去のエントリで、金利とインフレ率の差と、購買力平価/為替レートの推移はまとめてあります。

 

購買力平価 - ファンダメンタルズ研究所

 

95年の段階では、米国の金利は日本より5%も高いですが、日本円が最も買われた時期でもあるので、金利差はすぐに反映されるわけではないようです。

ただし、その後5年ほどで、米ドルは円に対してかなり強くなっています。(95年の段階で円が強すぎたせいもありますが)

 

外貨準備比率

Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserves (COFER)

 

為替への影響が気になったのでグラフを描いてみた。

 

全ての国の外貨準備高を合計したもの。

一番上の図の縦軸はドルに換算した時の額(単位:100万ドル)。

二番目の図は各通貨が占める割合(%)。

三番目の図は英国ポンド、日本円、その他が占める割合(%)。(上の図だと見づらいので)

 

劇的な変化はない、というのが第一印象。

依然ドルの占める割合が圧倒的に大きい。

(ちなみに二番目の図で合計が100%にならないのは、通貨統合前のユーロ圏の通貨を除いているため。「その他」にも含めていない)

 

 ユーロは登場以来それなりの割合を占めているが、ここ数年減少傾向(額では増えているが)。

「その他」が増えているのがここ数年の傾向で、豪ドルやカナダドルが中心のようだ。

 

英国ポンドが漸増傾向なのがやや意外。

英国の金融における影響力を反映しているのだろうか。

 

日本円は漸減傾向だが、2009年:2.9%→2010年:3.7%と増加している時期もある。

おそらくリーマンショック後に比較的安全な通貨として再評価されたのだろう。

 

ちなみに上記のサイトには、国ごとの外貨準備比率のデータもある。

 

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P.S. 95年以前のデータがなかなか見当たらないのだが、下記のPDFに1970年以降のデータが載ってる。

 

日本円の比率は91年の8.3%がピーク。74年以前はほぼゼロ。

 ドイツマルクも80年代90年代は比率が高く、10-18%程度。

 米ドルは50%台で今よりも低い。(70年代は50-80%で推移。76年がピーク)

 あと80年代は昔の欧州通貨のEcuが10%程度。

 

The Currency Composition of Foreign Exchange Reserves - IMF

豪ドルについて

豪ドルはリーマンショックの直後は売られましたが、その後は継続して買われ、2011年以降は対ドルではおおむね0.95-1.05のレンジで推移してきました。

今年に入ってからも4月までは1.02-1.06のレンジに留まっていましたが、5月に入ると大きく売られ、現在は対ドルで0.9近辺になっています。

豪ドルの今後の動きはどうなるのでしょうか?

 

単純に購買力平価で考えると、対ドルで0.7くらいが「適正」ということになり、現在の水準も割高ということになります。

(参考:OECD Statistics (GDP, unemployment, income, population, labour, education, trade, finance, prices...) Find in Themes -> Prices and Purchasing Power Parities -> Purchasing Power Parities (PPP) Statistics -> 4. PPPs and exchange rates, 1ドルに釣り合う各通貨の量が表示されるので、豪ドル/ドルの平価が知りたければ逆数をとる

豪州準備銀行総裁らも、(対ドルで0.9近辺まで下がった段階で)豪ドルが依然割高な水準にあるとの発言をしていますが、これはファンダメンタルズによっても裏付けられます。

ただ購買力平価並みの水準まで売られるかというと、それも考えにくいでしょう。

 

豪ドルが買われる要因として、米欧日よりも金利が高いこと(インフレ率もさほど高くない)や、中国などへの輸出の伸びなどがあります。

またリーマンショック後は先進各国で外貨準備の多様性を確保しようとする動きがあり、外貨準備に占める豪ドルの比率は上昇しています。

政策金利は徐々に下げられていますし、中国も経済に陰りが見えてきたので輸出が伸び続ける保証もないですが、それでも10年前の水準まで下がると予想するのはやや悲観的でしょう。

 

今後も政策金利の変更や中国経済の問題が話題に上がるたびに、豪ドルが売られる可能性は高いですが、対ドルで0.85付近まで下がれば買い支える力も強くなるのではないでしょうか。

米国の量的緩和縮小も豪ドル/ドルが下落する要因ですが、現段階ですでにある程度は価格に織り込まれていると思います。

 

緩和縮小とドル高

リーマンショック後は、「マネタリーベースが増えるとその国の通貨が安くなる」という場面が何度もありました。

米国でリーマンショック直後から行われ、その後ユーロ圏や日本でも行われた量的緩和は、まさにマネタリーベースを増やすものですから、量的緩和の進捗に応じて為替も動いてきました。

 

現在米国では緩和の縮小が検討され、年内(早ければ夏~秋)には実行されるようですが、ここ数カ月のドル高は基本的にこの動きに対応したものだと言えるでしょう。

緩和縮小の影響は、すでに現在の為替にある程度織り込まれているわけですが、緩和縮行の時期についての報道や、縮小時期に影響する米国の雇用統計によって、しばらく為替はめまぐるしく動きそうです。

 

海外業者の選び方

利用するFX業者は、各人の取引スタイルに応じて選べばいいと思いますが、海外には預けた資金を返還しない悪質な業者も多いので、注意が必要です。

 

以下のサイトはある程度参考になるかと。

海外FX業者の安全性比較

海外FX業者サービス比較

海外FX業者スペック比較

 

海外業者を紹介するランキングサイトなどでも、返金に応じない悪質なサイトを紹介しているケースがありますので、単一のサイトの情報を鵜呑みにしない方がいいと思います。